きんしつ錦瑟
錦瑟無端五十弦
一弦一柱思華年
荘生暁夢迷蝴蝶
望帝春心託杜鵑
滄海月明珠有涙
藍田日暖玉生煙
此情可待成追憶
只是当時已惘然
一弦一柱思華年
荘生暁夢迷蝴蝶
望帝春心託杜鵑
滄海月明珠有涙
藍田日暖玉生煙
此情可待成追憶
只是当時已惘然
詩
※日本で一般に読まれている本文によります。
書き下し文
錦瑟 端無くも五十弦
一弦一柱 華年を思ふ
荘生の暁夢は蝴蝶に迷ひ
望帝の春心は杜鵑に託す
滄海 月明らかにして珠に涙有り
藍田 日暖かにして玉 煙を生ず
此の情 追憶と成るを待つべけんや
只だ是れ当時 已に惘然たり
現代語訳
美しい錦の瑟には、なぜか五十本もの弦がある。その一本一本、琴柱の一つ一つに、過ぎ去った華やかな日々が思い出される。荘子は明け方の夢で蝶になって迷い、望帝は春の思いをほととぎすに託した。青い海に月が明るく、真珠には涙が宿る。藍田の山に日が暖かく、玉から煙が立ちのぼる。この思いは、思い出になるのを待つまでもない。あの時すでに、心はぼんやりと惑っていたのだから。
原文と書き下し文の対照
錦瑟無端五十弦 ― 錦瑟 端無くも五十弦
一弦一柱思華年 ― 一弦一柱 華年を思ふ
荘生暁夢迷蝴蝶 ― 荘生の暁夢は蝴蝶に迷ひ
望帝春心託杜鵑 ― 望帝の春心は杜鵑に託す
滄海月明珠有涙 ― 滄海 月明らかにして珠に涙有り
藍田日暖玉生煙 ― 藍田 日暖かにして玉 煙を生ず
此情可待成追憶 ― 此の情 追憶と成るを待つべけんや
只是当時已惘然 ― 只だ是れ当時 已に惘然たり
鑑賞
荘子の胡蝶の夢、望帝の伝説など故事を重ねた、難解で幻想的な名作。亡き妻を悼む詩、自らの生涯を振り返る詩など解釈は定まらず、その曖昧さが魅力とされています。
日本で親しまれる理由
難解で美しい象徴詩
語句
- 錦瑟
- 錦模様の大琴
- 無端
- わけもなく
- 華年
- 若く華やかな年月
- 惘然
- ぼんやりと心を失うさま
作者
李商隠の生涯と作品一覧は作者ページへ。
作られた背景
晩年の作とされるが、主題は古来議論が続いている。