げつや月夜
今夜鄜州月
閨中只独看
遥憐小児女
未解憶長安
香霧雲鬟湿
清輝玉臂寒
何時倚虚幌
双照涙痕乾
閨中只独看
遥憐小児女
未解憶長安
香霧雲鬟湿
清輝玉臂寒
何時倚虚幌
双照涙痕乾
詩
※日本で一般に読まれている本文によります。
書き下し文
今夜 鄜州の月
閨中 只だ独り看るならん
遥かに憐れむ小児女の
未だ長安を憶ふを解せざるを
香霧に雲鬟湿ひ
清輝に玉臂寒からん
何れの時か虚幌に倚り
双び照らされて涙痕乾かん
現代語訳
今夜、鄜州の空の月を、妻は部屋でただひとり眺めているだろう。遠くからいとおしく思う、幼い子どもたちが長安にいる父を思うこともまだわからないのを。夜霧に妻の豊かな髪はしっとり濡れ、清らかな月光に白い腕は冷えていることだろう。いつになったら薄いとばりのそばに寄りそい、ふたり並んで月に照らされ、涙のあとを乾かすことができるのか。
原文と書き下し文の対照
今夜鄜州月 ― 今夜 鄜州の月
閨中只独看 ― 閨中 只だ独り看るならん
遥憐小児女 ― 遥かに憐れむ小児女の
未解憶長安 ― 未だ長安を憶ふを解せざるを
香霧雲鬟湿 ― 香霧に雲鬟湿ひ
清輝玉臂寒 ― 清輝に玉臂寒からん
何時倚虚幌 ― 何れの時か虚幌に倚り
双照涙痕乾 ― 双び照らされて涙痕乾かん
鑑賞
自分が月を見るのではなく、「妻が月を見ているだろう」と想像する視点が独特。杜甫の家族への深い愛情が伝わる一首です。
日本で親しまれる理由
離れた妻子を思う月の詩
語句
- 鄜州
- 家族を疎開させた地
- 閨中
- 婦人の部屋
- 雲鬟
- 豊かな髷
- 虚幌
- 薄いとばり
作者
杜甫の生涯と作品一覧は作者ページへ。
作られた背景
安史の乱で長安に軟禁されていた至徳元載(756年)秋の作。