さんせいそんにあそぶ遊山西村
莫笑農家臘酒渾
豊年留客足鶏豚
山重水複疑無路
柳暗花明又一村
簫鼓追随春社近
衣冠簡朴古風存
従今若許閑乗月
拄杖無時夜叩門
豊年留客足鶏豚
山重水複疑無路
柳暗花明又一村
簫鼓追随春社近
衣冠簡朴古風存
従今若許閑乗月
拄杖無時夜叩門
詩
※日本で一般に読まれている本文によります。
書き下し文
笑ふ莫かれ農家の臘酒の渾れるを
豊年 客を留めて鶏豚足る
山重なり水複なりて路無きかと疑ふに
柳暗く花明らかにして又た一村
簫鼓 追随して春社近く
衣冠 簡朴にして古風存す
今より若し閑に月に乗ずるを許さば
杖を拄きて時と無く夜 門を叩かん
現代語訳
農家の暮れに仕込んだ濁り酒を笑わないでほしい。豊作の年で、客をもてなす鶏や豚もたっぷりある。山また山、川また川で、道がなくなったかと思うと、柳の緑が濃く花の明るく咲く中に、また一つ村が現れる。笛や太鼓が続いて春祭りも近く、人々の身なりは質素で昔ながらの風情が残っている。これからも、のんびり月夜に出歩くことが許されるなら、杖をついていつでも夜に門を叩きに来よう。
原文と書き下し文の対照
莫笑農家臘酒渾 ― 笑ふ莫かれ農家の臘酒の渾れるを
豊年留客足鶏豚 ― 豊年 客を留めて鶏豚足る
山重水複疑無路 ― 山重なり水複なりて路無きかと疑ふに
柳暗花明又一村 ― 柳暗く花明らかにして又た一村
簫鼓追随春社近 ― 簫鼓 追随して春社近く
衣冠簡朴古風存 ― 衣冠 簡朴にして古風存す
従今若許閑乗月 ― 今より若し閑に月に乗ずるを許さば
拄杖無時夜叩門 ― 杖を拄きて時と無く夜 門を叩かん
鑑賞
「山重水複路無きかと疑ふに、柳暗花明又一村」は、行き詰まったと思った先に新しい道が開けることのたとえとして、今も広く使われる名句です。
日本で親しまれる理由
「柳暗花明又一村」
語句
- 臘酒
- 十二月に仕込む酒
- 春社
- 春の土地神の祭り
- 拄杖
- 杖をつく
作者
陸游の生涯と作品一覧は作者ページへ。
作られた背景
乾道三年(1167年)、官を退いて故郷の山陰(いまの紹興)にいた陸游の作。