せいぎょくあん青玉案
東風夜放花千樹
更吹落星如雨
宝馬彫車香満路
鳳簫声動
玉壺光転
一夜魚龍舞
蛾児雪柳黄金縷
笑語盈盈暗香去
衆裏尋他千百度
驀然回首
那人却在
灯火闌珊処
※日本で一般に読まれている本文によります。
書き下し文
東風 夜放つ 花千樹
更に吹き落とす 星 雨の如し
宝馬彫車 香 路に満つ
鳳簫 声動き
玉壺 光転じ
一夜 魚龍舞ふ
蛾児雪柳 黄金の縷
笑語盈盈として 暗香去る
衆裏に他を尋ぬること 千百度
驀然として首を回らせば
那の人却って在り
灯火闌珊たる処
現代語訳
東風が夜、千本の花を一斉に開かせたようだ。さらに星を雨のように吹き落とす。飾った馬車の香りが路にあふれる。鳳簫の音が動き、玉壺の光がめぐり、一夜じゅう魚や龍の灯が舞う。蛾の飾りや雪柳、黄金の糸——笑いやささやきが暗香とともに去っていく。人ごみのなかであの人を何千何百度と探す。ふと振り返ると——あの人は、灯の乏しいところに立っていた。
原文と書き下し文の対照
東風夜放花千樹 ― 東風 夜放つ 花千樹
更吹落星如雨 ― 更に吹き落とす 星 雨の如し
宝馬彫車香満路 ― 宝馬彫車 香 路に満つ
鳳簫声動 ― 鳳簫 声動き
玉壺光転 ― 玉壺 光転じ
一夜魚龍舞 ― 一夜 魚龍舞ふ
蛾児雪柳黄金縷 ― 蛾児雪柳 黄金の縷
笑語盈盈暗香去 ― 笑語盈盈として 暗香去る
衆裏尋他千百度 ― 衆裏に他を尋ぬること 千百度
驀然回首 ― 驀然として首を回らせば
那人却在 ― 那の人却って在り
灯火闌珊処 ― 灯火闌珊たる処
鑑賞
元夕の華やかさを尽くしたうえで、本当に探していた人は灯火の薄い場所にいた——群衆の熱と、静かな発見がひとつになった名篇です。
日本で親しまれる理由
「衆里尋他千百度。驀然回首、那人却在灯火闌珊処」
語句
- 元夕
- 旧暦正月十五日の夜。灯籠の祭り。
- 灯火闌珊
- 明かりが乏しく、閑散としているさま。
作者
辛棄疾の生涯と作品一覧は作者ページへ。
作られた背景
辛棄疾「青玉案・元夕」。派手な宵のあと、「灯火闌珊処」の一句が後世に何度も引かれる。